ジヌよさらばのレビューと感想まとめ!ジヌよりも大切なものとは!? 

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「ジヌよさらば」というタイトルからは、さっぱり内容の見当がつかない作品ですが、「ジヌ」とは東北弁で「お金」のこと(ゼニ→ジヌ)。「お金よ、さらば」という意味です。

この作品は、銀行員をする中でお金アレルギーになり、お金に触れることすらできなくなった青年タケが、お金にさよならし、田舎の村にやって来るところから始まります。

そこからは、個性豊かな村人たちとのひたすらのドタバタ劇。ときにシリアスで、でも笑いのポイントが散りばめられていて、何回見ても同じ場面で笑えます。

でも、ただのコメディではありません。ところどころに、う〜んと唸るような名言が隠れているんですよね。このギャップがたまりません。

原作は、あのラッコの「ぼのぼの」でおなじみのいがらしみきおさん。
そして監督は、劇団大人計画の松尾スズキさん。大人計画の個性豊かな面々が登場します。

この記事では、「ジヌよさらば」のあらすじを追いながら(時にはネタバレあり)、名言の数々に迫ってみます。

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ジヌよさらばのあらすじとレビュー

このお話は、銀行で働く中でいろんなイヤ〜な経験をし、いよいよお金にさわれなくなるほどの体質になってしまった男が、お金を捨て、人を助け、人に助けられながら生きていこうとする物語です。

かむろば村にやってくるタケ

元銀行員のタケこと高見武晴は、東北のさむーい田舎の村に引っ越してきます。

迎え入れてくれたのは、村長の天野与三郎。ぶっきらぼうだけど親切な与三郎は、美人の嫁・あきことスーパーあまのを営んでいました。

隙間だらけのオンボロ屋敷を100万円で購入したというタケに、与三郎は呆れ果てますが、涙を流しながら「僕、お金使いたくないんです。お金一銭も使いたくないから、ここに来たんです」というタケに心動かされます。

その後も夫婦で食事を運んでくれるなど、何かと親切にしてくれる与三郎。そんなタケはスーパーあまのでアルバイトをするようになります。でも、お金を見るだけでも幻覚が見えるタケには、スーパー店員もなかなかつらい仕事でした。

Nao
Nao

この前段から、松尾スズキワールド全開です。松田龍平と松たか子という二代目サラブレッドの二人が、この不思議な世界にどっぷり浸かってること自体、ストーリーとは別のところで笑えます。

村長・与三郎の過去

ある日、タケは村の女子高生・青葉との関係を知られ、ヤクザにゆすられてしまいます。そこを、またもや与三郎から助けられるものの、交通事故を起こし、入院。村の大切な交通手段であるバスを大破させてしまいます。

村に持参したお金でバスを購入することにしたタケ。村にバスを寄付したことが大々的に報道されますが、それを見た多治見という男が村にやってきます。

あの手この手で嫌がらせをしてくる多治見。バスに落書きをしたり、店をぐちゃぐちゃにしたり、天野家に腐れた新巻鮭を送りつけたり。

タケは、多治見と与三郎のことを旅館の女将・ナツから聞きます。

昔、与三郎は警察官だったこと。多治見と旅館の板前・カツオは元ヤクザ仲間で、与三郎と情報を取引する仲だったこと。与三郎の当時の彼女に多治見が惚れ、ある日いなくなった彼女が川で遺体で発見され、与三郎たちの仲がこじれたことなど。

彼女が亡くなったことが与三郎の嫉妬から来た犯行だと疑われ、指名手配となった与三郎でしたが、かむろば村に流れつき、ナツの父親に見初められ町長になったのでした。

Nao
Nao

漫画が原作のお話とは言え、奇抜な展開です。お笑い感が少し消え、シリアス&バイオレンスな場面が続きます。話が少し込み入っていますが、頑張ってついていってみてください。

町長選にタケが出たワケ

村では、町長選挙が行われていましたが、そんなタイミングでまた与三郎は警察に捕まることに。対抗馬である収入役のいきちにはめられ、与三郎は立候補できなくなります。

そしてタケに「町長に立候補するように」とあきこに伝える与三郎。自分には無理だと渋るタケでしたが、村の神さま「なかぬっさん」に諭され、立候補することにするのでした。

カツオが自首したことで、釈放された与三郎は、タケの応援演説にかけつけます。その後、対抗馬のいきちが立候補を取り下げ。

次の村長選では、出馬するんですか?と与三郎に聞くタケに「出る」と答える与三郎。そしてお前は出るのかと問い返されたタケも「出ます」と即答。

村の神の生まれ変わりのような進が「おもしれーな!」と笑うシーンで、この作品は幕を閉じます。

Nao
Nao

大自然に囲まれた村で、実は愛ある人々と暮らすことになったタケが羨ましく思えてきました。こういう人生もアリですよね。

レビューのまとめ

見知らぬ東北の田舎に一人でやってきた男が、村の人達とそれなりに支えあいながら生きていくなかで、お金以外に大切なものを見つけることができる、そんなお話でした。

それにしても、最後の進くんの「おもしれーな」はどういう意味だったんでしょう。「人っておもしれーな」なのか、それとも「人生っておもしれーな」なのか。どっちもかなぁ。

ジヌよさらばの名言

キャストが個性豊かで、笑わせる場面やシュールな場面もあちらこちらにありますが、このお話を引き締めているのが、名言の数々です。

なかぬっさんの名言はさすが神

都会から、金も人間関係もすべてを捨ててかむろば村にやってきたタケ。そんなタケの心を見抜いた与三郎や村の神「なかぬっさん」が話す言葉は何とも重みがあります。

事故を起こしたタケが夢の中でなかぬっさんと話すシーン。お金を使わない代わりに、村の人達に迷惑ばかりかけて、自分は無価値な人間ではないかというタケになかぬっさんはこう言います。

自分を捨てた人間は、人のために生きるしかない。

これはタケのことであり、逃亡して村にやってきた与三郎のことでもありますよね。自分のすべてを人のために捧げる生き方は、タケも与三郎も同じなんですよね。

村長に立候補することをためらうタケに、なかぬっさんはこう声をかけます。

自分を捨てるチャンスだぞ! やらないで何をする? 何かやらないといられないのが人間だべ。今度こそ意味があるんじゃないか、今度こそうまくいくんじゃないか、そうやってどれぐらい世の中がよくなった? それでもやめないのが人間だべ。今さらやめるな。まださらに悪いことになっても、やるのが人間だべ。

タケではなくても、胸にグサリと来る言葉です。

人って、いろいろやってみるけど、思うように行かないことの方が多いもの。でも、そこに意味を求めたり、次はいい感じになるんじゃないかとか思うけど、実はそう変わってなくて…。で、次もまた同じようなことをする。これって、人間の業ですかね。だからこそ人間というか。もがきながらでも、前に進んで行動していけって、村の神さまは言ってるのかなぁ。

西田敏行さん演じる「神」がまさに神ってる!としかいいようがないです。笑わせて、考えてさせて、最後は悲しくさせるという、さすが西田さんだなぁ、西田さん以外にこの役できる人いるかなぁと思わずにはいられません。

与三郎の名言には実感あり

タケの応援演説に駆けつけた与三郎は、こんなことを言います。

自分のために金を使わない。人のためにしか金を使わない。過疎でもっとこの村は貧しくなるかもしれない。金ではない、何か大切なものを探しているこの男が村長になるべき。

深いですよね。金、金と言っていても、この先人口が減り続ける村に、金が減っていくのは目に見えている。だからこそ、金に頼らない「大切な何か」を村のトップの村長が持っておくことは、何より大切なこと!と言ったところでしょうか。

ジヌよさらばの感想

私が「ジヌよ、さらば」を見ようと思ったのは、マイナーな作品だけど評判のよういものを探していたときに、引っかかってきたから。

ネットでも、
・松尾スズキ作品にしては、感動作
・なかなかの良作
・やべー、おもろ

など、いい感想が並んでいます。

最初こそ、実は期待せず見ていましたが、笑えるし、考えさせられるし、意外なヒット作を見つけてしまった!そんな作品です。

中でも、好きなのは、やはり西田敏行さん演じる村の神「なかぬっさん」ですね。東北弁で語る言葉には説得力がありますが、コミカルな演技もさすが! 秀逸です。

監督である松尾スズキさんの演出がきいているのでしょうが、やはりあの個性はすごいとしか言いようがありません。こんなおじいちゃん、うちの地域にもいればいいのに、と思ってしまうぐらい好きなキャラです。

必ずなんとかなる。思ったとおりでないけども。

かむろば村ではすべての問題が解決する。でも、自分の思ったようには解決しないけどな。

Nao
Nao

このなかぬっさんの言葉が人生を物語っている気がします。解決しない問題はなくて、何とかなるもの。それは理想の結果ではないかもしれないけれど、どうにかこうにか解決しながら、人の人生は進んでいく、ってことですかね。

なかぬっさんとお話したいなぁと思わずにはいられません。ザリガニが降ってくる町はいやだけど(笑)、なかぬっさんのような長老が住む村があれば、引っ越してたみたいものです。

すごく深いことを考えさせてくれる作品だと思いますが、ジヌより大切なものって何なのでしょうね。私は、前に向かって生きること、ひたすら生きること、なのかなと、この作品を見て思いました。

ぜひ、皆さんも見てみてください。そして、どう感じますか?

コメント

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